BL要素あり

 
ある部活のミーティング



 「7月12日に関東地区大会が行われることになった」


 「まじかよキャプテン!」
 「燃えるぜ!!!」

 ざわざわ


 「我々は西部地区で見事優勝することが出来たが…そんなのはまだまだ蛇の口だ!!!」


 「序の口ですキャプテン」


 …ざわざわ



 「……いいか、ここはまだ日本。俺たちは狭い!世界を見れば想像を絶する相手が想像できないほどいるんだよお前ら!!!」(キャプテン)

 「おう!!」

 「うおおおおう!!!」


 わーわー





 彼らは 『掃除部』 である。





 「キャプテン、そういえば汚い情報が一つあります」

 チームのスパイ 高宗(たかむね)が言った。


 「なんだ?そいつは許せんな」


 「西川高校が女子を正式メンバーに入れました」


 「な、何ィ…!!!」

 「それまじ汚ねぇぞあいつら!!!!」

 「伝統を汚した!!!」


 一同は体で怒りを表現


 「おいおい、ホコリがたつじゃないか」(高宗)




 「…なんでお前らそんなに慌ててるんだ? 女だぜ、所詮」

 と口を出したのはエースのリュウだった。



 「わかってないな、リュウ。女って言やぁ… ありゃ掃除のプロだぜ。
 自然に生まれながら技術的素質を持っている。…生きるための本能としてな」

 と隆(たかし)が説明


 「…そうかぁ?俺は女なんかより アキラの方がよっぽど天才的だと思うぞ」(リュウ)


 「お、お前まさかまだアキラに部屋の掃除させてるのか?
 それでも部員かよ」

 「なんてことだ!!」(キャプテン)


 「俺、部活と私生活は使い分けてるんでね」(リュウ)


 「リュウはいつもちらかしちゃってさぁ、ついやっちゃうんだよね」

 むさくるしいチームの中のアイドル的存在、アキラが「もーあきれる」という感じで言った。


 一同、気を高める



 「…リュウ、アキラ。
 今回の西川高校のこの不当行為は…お前らに原因がある」

 高宗が言った。


 「え、なんで」(リュウ)

 「ぼ、ぼくにも?」(アキラ)



 「大アリだ。お前ら二人がいつも仲良くデートしてるお陰で、
 本部はすっかり…アキラ、お前は実は女なんじゃないかと疑って思い込んでしまったんだ。」


 「…は…はぁ!?」(アキラ)

 「いつデートしたよ」(リュウ)


 「お前らいつも一緒に出掛けてるだろうが!!!」
 寛(ひろし)が声を上げた。


 「ただの飯の買い出しだろ」(リュウ) 

 「毎日リュウの部屋で食ってるだろ!!休みの日も二人で街に…」(寛)

 「落ち着け寛。なぜお前がそれを知っている」(隆)

 寛「…。」



 「少しはつつしんでくれたまえ」(高宗)

 「…な、なんだよそれ!僕が何をしたっていうんだ!!」(アキラ)

 アキラは振り返ってキャプテンを見た

 「アキラは悪くない!アキラは悪くないぞ!!」(キャプテン)


 キャプテンは明らかにアキラに甘かった。


 「…キャプテン。これは由々しき問題なんです」高宗が眼鏡を指でスッと上げて言った。

 「掃除部推進委員会にも苦情がきてるんです。
 あれは恋人同士なのか?汚れてる!!…いや、あれは実は女なんじゃないのか?どっちにしろあんなにかわいいのは詐欺だ!!…と。」


 「ふざけてる!!!」(アキラ)




 「…だから女が許されたのか…  …くそ。西川高校の野郎ども、たぶんギリギリの服で俺たちの目を焦らせるつもりだぜ!!」(寛)


 一同しんとなって想像に集中した。




 その中リュウが口を開いた

 「…じゃあどうしろって言うんだよ」


 「…しばらく会うのやめろよ」(寛)


 「…だってよ、アキラ どうする」(リュウ)


 「…知らないよ。ほっとけばいいよこんな失礼でくだらない話!」(アキラ)

 アキラは怒って立ち上がった。


 それを見てキャプテンは慌てた

 「アキラは悪くない!アキラはなんっにも悪くないぞ!!!アキラはうちの戦力だ!!そのままでいいんだ!!!」







 
「あんたそれでもキャプテンか!!!」






 突然の高宗の喝に部屋はしんとなった。



 「…少なくとも 少しは行動を抑えてもらわないと、このままだとPTAにまで騒ぎがいきそうなんですよ…
 女子掃除部も…合同も…などという話が上がっていて、
 それに備えて今やいろんなチームが美女をスカウトし…入れこんでるんですよ!!時には外国から!」






 「…すげぇ」


 「対戦してぇ…」





 部室は重く、気まずい雰囲気が流れた。


 「…そうか」

 キャプテンが考え込むように声を出し
 しかし次の瞬間いつもの熱血テンションに戻った


 「それじゃあ、練習あるのみだな!!」



 こんなときはみんな、キャプテンがバカでよかったと思った。















 今日のメニューは体育館の地下倉庫での無言掃除。

 暗くて怖い体育館地下倉庫。
 修学旅行のようにみんな騒ぎたいところだが「無言掃除」となればしゃべるわけにはいかない。

 みんな黙々と作業をこなした。
 手際良い。


 アキラはずっと、さっきのミーティングの話を思い返していた。

 (どうしてそういうことになるんだ。僕はリュウと遊んじゃだめだって?なんだよそれ!)

 イライラがつのり、アキラの動作が荒々しくなっている。それに部員たちの気が散り始めていた。




 リュウのポジションはハイター(ほうき)でアキラはキャッチャー(ちりとり)だった。

 お互い息が合わないと成り立たない。
 仲が悪くなるのはやはり良くない。

 まわりもそれはわかっていた。






 そんなアキラに、リュウがそっと近づいて小声でささやいた。



 「今日、 おでん」



 アキラは驚いて振り返った。
 リュウは知らぬ顔でバスケットボールを運んでいる


 この静寂の中、その声はばっちり全員に聞こえていた。


 アキラはしばらく呆然としていていたが、しだいに笑いが込み上げてきた。


 (もう夏なのに…)













 …その時だ、ある奴の気配の登場に一瞬にして周りが凍りついた。

 一匹の黒い…アレが

 サタンの使いが







 カサカサカサカサカサカサカサカサカサ…!!!!!!!!!







 有り得ないスピードで這い回り、
 あろうことか、なんと よりによってアキラの方に突進してきた。



 一同の血の気が引く。



 あぶない!!




 アキラあああああああああああああああ!!!!!!!!!






 あああああああああ…

















 
ズグシャアア!!!














 …






 シーン…












 アキラは顔色ひとつ変えず


 視線もあわせず  一瞬で奴を踏みつぶしていた。







 フリーズする部員たち









 …







 しばらくしてリュウが噴き出した。





 「これのどこが女なんだよ」




 一同が人差し指を口に当て、リュウをにらんだ。














 少しガタつきながらも、辺りは静かに整理されていった…







 end




 だれか漫画化してください^^