1.戸を開けて飛び込む朝日に霜焼けの両手を合わせ今日も生き行く [H23.12.23]




 2.まだ弱い日照す山を煙でぼかし 影と私が同じ草取る [H23.12.23]

   (お墓掃除のとき詠んだもの)



 3.霜の張る雑巾たんぽの湯で溶かし 金柑の実に日が入るを見る [H23.12.26]




 4.年末の窓ふき久しく鍵開けて吊(つる)したままの風鈴が鳴る [H23.12.27]




 6.ふと祖母を懐(おも)う 今年一年ありがとやんした [H23.12.31]

   (入院中の祖母の見舞いに行って帰るとき「ありがとやんしたー!」って言ってたのを思い出した)



 7.母の里 山川早い日の沈み 無人の駅の電灯下に幼き頃の私居るかな [H24.1.3]




 9.葉書を出すに遠回りして すすきの海や小旅人 [H24.1.15]




 10.いつもより星よく見えるこの夜に 私にはまだ知らぬというつみがあるかな [H24.1.21]





 11.ぶらんこに乗って手を振ったあと つながれおすわりしている犬と
    まだ耳に残る声を聞いてる
[H24.1.29]




 12.遠くに遮断機聞こえる 遠く山に並ぶ線路 久しぶりに鳥のさえずり盗み聞いてみよう [H24.2.12]




 13.外は雪 陶器の下駄持ち 見知らぬ土地で チョコ饅頭を16ください [H24.2.18]




 14.夜長く 閉められたバスの休憩所  外灯に舞う 雪の白さよ [H24.2.18]




 15.手を握られ 冷え症には根菜類と穀物と なにでも生姜と別れ際 [H24.3.11]




 16.コーヒーうまい コーヒーがうまい 素朴と共にパン半分 [H24.3.18]




 18.「ワンタッチ」と背中をたたいて走ってく さびしくて 素直で かわいい子  [H24.4.13]




 19.春の陽気の葉桜映る水飲みぐるぐる柴犬まわる [H24.4.14]




 20.空に立ち 鈴(りん)と重なる鶯(うぐいす)の声 身に染みて泣く 糸を繋げと [H24.4.29]







 22.何描(えが)こうかとポツポツ落ちる
    柿の花掃き 朝日に臨む
    母がちぎって手渡した レモンマリーゴールドの匂いと
[H24.5.11]




 24.虫の声と 蛙の声と 見知らぬ親子と プラットホーム [H24.6.30]

    (夜の 人の少ない小さな駅のプラットホームで)



 25.短い笹の先に揺れ かまえるイナゴ 天の川まで跳ぶ気かな [H24.7.2]




 26.雨に濡れ 垂れる木の葉に 寄り添いたいよな今日帰り道 [H24.7.3]




 27.木の葉から覗く日輪見れば  あの人の笑顔かと思い  頬をかすめる黒アゲハ見れば  あの人の  魂の 一羽かと思う [H24.8.25]




 29.門開けて 柿の葉のよく散りし朝 子どもの体力回復鮮明 [H24.10.8]

    (郵便受けにきてた新聞の見出しに「子どもの体力回復鮮明」とあった)



 30.凛冽(りんれつ)たる早朝に 重く佇む(たたずむ)竹林 皆物言わず色を潜めて [H24.11.18]





 31.夕焼けに戻る向かい風受け 今日も一日幸福でした[H24.11.20]




 33.威厳の雲の間より 明日の青見る 過去の青見る [H24.12.9]




 34.崩れかけた空き家の庭に 紅梅だけは 色を忘れず[H25.2.23]




 35.朝まだき 地に浸みた雨  昨夜の師の言葉のように[H25.3.?]




 36.竹林まわり桜の木まわりひのきえのき 山山をまわる [H25.5.3]




 37.アヤメ葉先に露水晶の 母の日近くの朝であるかな  [H25.5.6]

    




 38.暁の雨よ 言葉と重なり 私の喉に浸みわたり 殻を溶かし流しておくれ [H25.5.19]




 39.入道雲が影造り 民家の朝飯碗音涼し [H25.7.7]




 40.寺の縁にて雷鳴聞くや 滴る山を登り急ぐかな  [H25.8.4]





 41.子規集読ミテ目覚マシニ 日傘草取リツクツクホウシ 秋ノ風  [H25.9.15]




 42.帰り道 お礼にもらった いちご飴 こんなにおいしい いちご飴  [H25.11.20]




 43.我行くなと言ふように 部屋に襖のはられし冬を [H25.11.30]




 44.竿に巻き 朝日向き待つ野菊見て ぼやく目先を覚まされるかな  [H25.12.8]

    

    (眠気さと同時に 自分の考え方まで 目を覚まされた気がした)