特急列車で広島に帰る


広島まで向う列車の中、僕は本当に疲れ切っていた。
3週間の間、母校の中学校に教育実習に行っていたのだ。

本気で疲れた。
座っている暇などまったくなかった。
昼休みも生徒達と遊ばなくてはならなかった。
どうも苦手だ。うまい会話が見つからなかった。


「先生〜先生はどうして先生になるの〜?」
「そういう学部に行ったからだよ。」


もっとましなことを言えばよかった。
生徒達はつまらなさそうに ふうん と興味をそらす。
しかし先生は
「生徒達と思い出を!!ふれあいを!!もっとふれあいを!!」
…とうるさく言ってきた。
まったく本当に終わってほっとしている。
絶対教員採用試験ふけてやる。
ああ、はやく我が城(一人暮らしのアパート)に着いてくれ…









しばらく眠っていた。
気がつくと、ウォークマンも全曲終わっていた。

『多くを望んでいませんか〜♪』

とか言ってた気がする。
別に。ふん。






息をついてふと横を見ると、

「…おすもうさん?」

と一瞬思ったくらい
すうううううごいデブなおっさんが座っている。

せ…せまい


すごいデブだ。
真剣にデブだ。
こんなデブなデブはじめて見た。


僕は横目でちらちらその人を見た。
うん。やっぱり汗かいてる。クーラーけっこうきいてるのにな、

荷物も

「ほんとこれ持ってきたのか!?これ全部!?」

というくらい多い。
多すぎる…  アホかこいつは。腹にでも入れてこいよ。
(というか僕の足元にもかなり荷物が侵入してきている)



そしてデブはとうとう眠りだした。



やった!!!!



僕は思った。
寝たらいったい何が起こるか、興味があったのだ。



いびきかくかなぁ
でっかい鼻ちょうちん見れたりして!
寝言で食い物の単語唱えたりすんのかなー!
(できれば日常会話なんかもまぜて!)

わくわくわく♪

あれ?おっかしいなー
僕ってこんなに他人に興味がある人間だったっけ? はは!

ほぉら はやくはやく 何かしろよ〜!
じゃないとエサやんないぞぅ♪(ナーンチッテ!)




「間もなく広島です」




…しまっ!!!!



僕はあわてた。
道は完璧にふさがれている。

お 起きるかなこいつ…と不安ながら肩を叩いてみる。
意外にあっさり目を開けた。


「すみません降りるので…」


おっさんは顔をしかめ、何かわけのわからない言語をしゃべりだした。

「○+:*‘|$%’?」



し、しまった!!!
こいつ中国人か韓国人かなんかそこらへんの人だ!!!!
や、やっべ〜…怒ってんのかな〜これ…
いやいや通じるだろ、普通!表情で!!
どけよ早く!!!





どぎまぎしていると、後ろの席からサングラスをかけた黒スーツの(かなりあやしい)男が顔を出した。
そしておっさんに

「&%’(#(’=7(’……」
とまた僕には理解不能な言葉で耳打ちしている。



やった!!!この人たぶん通訳だ!!
あ〜よかった〜もうこのまま大陸連れてかれちまうかと思ったぜ〜
はやく帰って至福の時間を満喫したいんだよ〜頼むよ〜


するとおっさんは急にさっきよりも鋭い目つきでぼくを キッ と睨みつけた。
そして次の瞬間、ものすごくひどい音量で叫び始めた。


「$#(’Y*L`☆P!!!!!~P&%$=〜〜□◆(!!!’)&%!!!&%▽☆#”+><P`P||~♂9(「}*@<”$#$}*!!!?=〜=+++、M{`P!!!!!+**………………………………………………」



…え?
何これ(汗)

みんなが一斉にこっちを見る。


な…なんだ!?
なんだこのおっさんわ!!!なげぇぞこれ!!!
なんか途中でスカポンタンとか言った気がするけど…気のせい…
い、いやいやなんなんだよ!!!
なんで怒られてんだよ!!
僕はただ道をあけてほしいだけなのに!!!









ようやくスピーチが終わると、さっきの通訳がしゃべりだした。



「彼はこう言っています。

君はまだ若いのにいったい何弱気なことを言っているんだ!!!社会をなめとんのかコラァ!!
私が小さいころなんて食糧なんて3日もてばかなりいい、
みんなカルシウム不足でみんなイライラして
ばあちゃんが暴れだすのとめるのに毎日必死だったんだぞ!!!
長い修行を重ねてようやく日本の山岡さんというお方に出会って
だけどもうその時俺の手はすっかり汚れちまってて
金は底を尽きる
帰る家もなければ
借金取りに追われるばかり!
そんなとき家族から電報がきて何かと思ったらばあちゃんが息吸いすぎて危篤とか書いてあってわけわかんなくなって
そんなんで俺はすべてを失っちまってどん底で何もする気が失せてもうこんな自分が嫌になって
山岡さんに俺死のうと思いますって相談したら
山岡さん『馬鹿このデブ野郎!!』って手をあげたけどその手はそのまま俺の胸をおさえて
『ここにはいったい誰がいるんだい』ってやさしく抱き包んでくれて俺は泣き崩れて
そうだ、もう一度夢を見ようと京都に向かってそれでそこでがんばってやっとここまでこれたんだよ!!!
山岡さん俺のせいで死んじまったじゃねーか馬鹿野郎!!!
お前はその胸の中に誰もいないのか!!
そいつは泣いてりゃしないのか!!
君のその友達はそんなことを言ってても本当は全部お前の為なんじゃねーかわかってんのかボケェ!!!!お前ももっと素直になりやがれこの甘っ子野郎が!!!!」


















































































しーん




















































…一体なんて通訳しやがったんだこのヤロウ。





end




無駄にがんばってる作品でした。
あと「広島」は適当に選んだだけで特に意味はないです